ラテンアメリカ・カリブ海 リージョナル・ブリーフ

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経済要旨

現在の金融危機は、ラテンアメリカ・カリブ海地域の5年間の順調な経済成長に突然の終結をもたらしました。2003年から2008年までの平均5.3%の経済成長予測は、金融危機が悪化するにつれて下方修正されました。地域の昨年の成長率は4.3%でしたが、2009年には2%前後に縮小し、2010年には約3%に回復するとされています。

需要の低下、送金の減少、一次産品価格の下落など、金融危機の影響は実体経済でも感じられています。それにも関わらず、同地域は大規模な通貨の切り下げ、銀行崩壊、債務不履行、インフレや資本の逃避なしで現況を乗り切りました。これはすべて2001年から2002年の金融危機の影響が残る中で、うまく財政規制・管理を行ったおかげです。

中南米は今回の金融危機の発生地ではなく、むしろ世界経済の中心地崩壊の犠牲者です。現況が不安定であるにもかかわらず、ラテンアメリカは-ブラジルが既に示しているように-健全な経済基盤と備えのおかげで他の地域より早く回復する見込みです。

参考:ラテンアメリカ、金融危機からの迅速な回復(英文)

 

各種の効果

堅実な財政政策と好況の時にマクロ経済の脆弱性を縮小させたおかげで、同地域各国が本金融危機に比較的有利な体勢で臨むことができた一方で、すべての国々は外部の影響を受けています。

  • メキシコと中米はアメリカとの緊密な経済連携と貿易関係にあるため、景気後退の影響を被っています。送金は2008年には6%下がり2009年には10%下がると予測されています。メキシコは2009年大幅なマイナス成長を経験するでしょう。
  • 南米では、一次産品価格の最初の崩壊が同地域の一次産品豊富国に大きな打撃を与えました。しかし先般の価格の反発が経済の迅速な回復に貢献するでしょう。
  • ベネズエラやチリ、コロンビアやペルー等の石油輸出国は、石油の国際価格の急落(2008年7月には1バレルUS$147→2009年8月には1バレル約US$70)による歳入の減少に対応するため支出を調整する必要があります。
  • ブラジル、チリ、コロンビアやペルーは、好況時に貯金をし、市場のさらなる多様化とアジア経済との関係強化を行いました。全般的に、自立した中央銀行を持ち、為替レートが柔軟でインフレに向けた体制があり、堅実な財政プロセスのある国々が一番状況の良い国々と言えるでしょう。

参考:世界銀行2009年送金予測を下方修正(英文)一次産品市場の見込み(英文) 

 

今後の課題-危機を機会へ転換

前例のない金融危機の回復には前例のないイニシアチブが必要となります。政策立案者は、長期成長の状態を維持しながら金融危機の短期的な問題に対応するという課題に直面しています。ラテンアメリカ・カリブ海地域では、2002年から2008年の間に6000万人もの人々が貧困から抜け出しましたが、現在ではこれが逆転するという危機にされされています。世界銀行は、2009年の終わりには同地域の4-600万人が一日の所得がUS4ドル以下の貧困に陥いると予測しています。この状況は、2015年までのミレニアム開発目標outer link達成の見込みを大いに鈍らせてしまいます。

この金融危機に対応するため、ラテンアメリカ・カリブ海地域の国々は補助金の増加、税金の引き下げ、特にインフラへの公共支出の増加など数々の景気対策を行っています。最初は、ほとんどの政策構想は地域の金融市場の流動性を重視したものが中心でしたが、徐々に財政政策や雇用創出が重要視されるようになってきました。

金融危機は同地域にとって迅速な回復と危機後のより良い経済を生み出すために必要な改革を実行する機会でもあります。教育水準や事業計画、インフラの改革は、同地域に国際競争力をもたらします。

加えて、同地域は広範囲に広がった大学教育や公共料金などに対する補助金を削減し、脆弱層をより一層財政的に支援する機会を得たのです。中南米は年間このような全体の補助金にGDPの5-10%を使っており、その3分の1は最も裕福な層が獲得しているのです。

もしこの資金が条件付現金給付プログラム(以下CCT)に割り当てられれば、貧困層の子供や若者に健康診断や教育を受けさせるための給付金を今までの3倍充てることができるのです。この取組みは既に同地域で始まっており、広がりつつあります。ブラジルで始まったプログラム”Bolsa Familia”やメキシコの”Oportunidades”はコロンビアエルサルバドルouter linkジャマイカニカラグアでもたち上げられました。

 

世界銀行の協力

金融危機に対応するため世界銀行は、2009年6月末までの予算年度のラテンアメリカ・カリブ海地域への支援を大幅に増加しました。世界銀行は通常の融資額のほぼ3倍にあたるUS140億ドルを新たに承認しました。うち138億ドルはIBRDからの貸付で、2億300万ドルはIDAからの融資です。ほぼ30億ドルがCCTプログラムに割り当てられました。また、このほぼ同額が予算年度2010年にも実行される見込みです。

ブラジル、メキシコ、アルゼンチンは最も大きな借り手で、環境、経済政策、社会保護セクターに最も大きな支援がなされています。予算年度2009年では、IBRD貸付全体の42%が、IBRD/IDA貸付全体のほぼ3分の1が同地域に向けられています。

繰延べ引出しオプション (以下DDO)は数カ国で適用されています。予算年度2009年には7カ国(コロンビア、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、メキシコ、ペルー、ウルグアイ)で9のDDOが承認され、流動性のための資金を受けました。この新しい財政手段は、世界銀行が予防資金を備え、各国政府に前向きな市場のシグナルをおくるという世界銀行の新しいコミットメントを表しています。

世界銀行グループは、財政救済によって支援を行っていますが、世界の指導者が人的な影響に目を向け続けるべきだと信じています。世界銀行は、先進国に景気刺激策の0.7%に値する、又は出来る限りの追加資金を赤字や救済保証を担うことのできない途上国を救済するための脆弱国基金向けに公約することを求めています。

世界銀行は予期せぬ課題に迅速に対応しました。新型インフルエンザ(インフルエンザA/H1N1)の流行に対応するメキシコを支援するため2億500万ドルの緊急援助を承認しました。ラテンアメリカ・カリブ海地域では、新型インフルエンザの影響を和らげるためアルゼンチン、ベリーズ、コスタリカ、ドミニカ共和国、ホンデュラス、ニカラグアなどの国々が直接的な支援を受けました。

世界銀行は、より良いガバナンスや透明性を推し進める効果的かつ持続可能な手段の開発に支援を行っています。世界銀行はまた、同地域の国々に貧困、気候変動や競争力に関するイシューの革新的な財政支援および知識提供を行っています。

世界銀行とアルゼンチン、ブラジルにある機関の研究者で新しく作られた”Human Opportunity Index”は、それぞれの国の状況がどのように飲料水、衛生、電気、基礎教育へのアクセスを可能・不可能にするかを表しています。これは同地域の人々の機会を向上させる公共政策に焦点をあてる新しい分野の研究のドアを開くものです。

6月には、スペイン政府と世界銀行は4,000万ドルの経済開発基金”the Fondo Espaňol para América Latina y el CaribePDF”を立ち上げました。この2年間の基金の主な目的は、ラテンアメリカ・カリブ海地域の各国が、成功例であるスペインの経済・社会開発戦略から生まれた教訓を学ぶこと、およびインフラ、持続可能な開発、プライベートセクター開発、ガバナンスやアカウンタビリティを含む分野の世銀戦略を支援するものです。

世界銀行は、同地域の国々の様々なニーズに見合うよう地域戦略を調整してきました。中所得国には分析・アドバイス、新しい財政支援や技術協力を含むサービスを提供しています。

参考:2008年、ラテンアメリカ・カリブ海地域と世銀のパートナーシップにとって重要な年となりました。

 

中所得国とのパートナーシップをとおして

G-20のメンバーであるアルゼンチン、ブラジル、メキシコは地球規模課題に対して重要な役割を担っています。世界銀行は、革新的なプログラムと南南協力をとおしてこれらの国々と強力していく方針です。

12月には、世界銀行のチーフエコノミストの所属する部署から”Low Carbon High Growth: Latin American Responses to Climate ChangePDF”という報告書が発表されました。報告書では、中南米は世界の排出量のたった6%しか排出しておらず、また他地域と比べてクリーンなエネルギー構成をしていると述べられています。また、同地域は地球温暖化の緩和と気候変動による影響への適応の「解決策の提供者」となることができるとも書かれています。

ラテンアメリカ・カリブ海地域は、排出量を削減するための新しい技術や取組みを行ってきました。ブラジルは水力発電やエタノール、バイオディーゼルなどの代替エネルギー源の拡大によりエネルギーの独立性を確立しています。このようなさとうきびベースのエタノール利用は、穀物生産からの土地転用の必要もなく財政的にも環境的にも持続可能です。

クリチバ(ブラジル)で紹介された環境に優しい公共交通政策は、ボゴタ(コロンビア)で広がり、今や同地域の数多くの都市に広まりつつあります。コスタリカは、「生態系サービスへの納付金」というさまざまなイニシアチブをとおして生態系の保護に金融資産価値を付けるという取組みで世界に知られています。

このような国々の開発アジェンダに対応するため、世界銀行は以下の革新的なプログラムを紹介しています:

 

最貧困層への支援

ラテンアメリカ・カリブ海地域のCCTプログラムは、金融危機の影響から最も脆弱な人々を保護する手段として世界銀行の予算年度2009年にはほぼ30億ドル規模拡大されました。IDAでは同年度、5カ国への非譲許的融資およびグラントなど同地域の最貧国に2億300万ドルの支援を行いました。

プログラム例:

  • “Oportunidades” CCT プログラム(メキシコ、15億ドル融資)
  • “Familias en Acción”CCT プログラム(コロンビア、6億3650万ドル融資)
  • 水と衛生サービスの改善(ニカラグア、4000万ドルグラント・クレジット支援)
  • 農村連合プロジェクト(ボリビア、3000万ドルの財政支援)-選定された地域で、貧しい農家の市場へのアクセスを改善するプロジェクト。
  • 復興とインフラ緊急整備(ハイチ、2500万ドル)-2008年8月と9月にハイチを襲ったハリケーンと熱帯暴風雨による被害に対応。
  • 食糧危機への取組み(ホンデュラス、1000万ドル無利子融資)

2009年6月30日、ハイチはIDAとIMFから承認を受けた重債務貧困国(HIPC)イニシアチブの終了ポイントに達し、12億ドルの債務救済を受けました。ハイチは、このイニシアチブの終了ポイントに達した26カ国目の国となります。ハイチは、重債務貧困国イニシアチブと多国間債務救済イニシアチブ(MDRI)より2億6500万ドルと9億7270万ドルの救済措置を受けました。

 

ステークホルダーの参加

2009年4月、春季会合の期間にラテンアメリカ・カリブ海地域は金融危機に関するセミナーを行いました。エルサルバドルのマウリシオ・フネス新大統領が基調講演者でした。

2008年11月にはG-8の代表者及び西半球の国会議員やエネルギー企業の幹部100名以上がメキシコシティに集まりました。その場で、金融危機の解決策には経済の持続性と温室効果ガスを2050年までに1990年比80%削減する取り組みが含まれるべきとの同意が成されました。この会議は、メキシコ議会主催、世界銀行とGLOBEouter linkの共催で行われ、気候変動への取り組みを議論し、同意するために南北アメリカから初めて国会議員が集まる会となりました。

また2008年10月には、メキシコ財務省と世界銀行が同地域の財務スポークスマン向けに初めてのフォーラムを開催しました。メキシコでの議論を継続するため、ウェブベースの議論の場も立ち上げられました。


外部リンク:

G-8outer link
G-20outer link
メキシコ議会(スペイン語)outer link
ブラジル下院議会(スペイン語)

参考:
ラテンアメリカ・カリブ海地域ブリーフ(スペイン語)




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