| 2008年11月24日—世界貿易の縮小が迫り、「途上国の歩みが数年分後退」し、近年の開発が帳消しになってしまう可能性があると、カタールでの国連会議を前に、世界銀行の貧困削減・経済管理ネットワーク担当副総裁ダニー・ライプツィガーが警告した。 同副総裁は、金融危機がすでに貿易に影響を及ぼしており、過去6年間にアフリカなどで達成された進歩を台無しにしかねないとしている。 低所得国は昨年の食糧・燃料価格高騰の打撃を受けており、「弱い立場の人々を守るためにできる手立てをほとんど持っていない。世界的な景気後退が確実となった今、我々は途上国が難局を切り抜けられるよう対処していく」とライプツィガーは述べた。 世銀グループは10月の年次総会において、途上国への支援を拡大する用意があると発表した。IBRD(国際復興開発銀行)の融資を3年間で1000億ドルまで引き上げることや、IFCの貿易金融プログラムを30億ドルに倍増するなどの措置が計画されている。世銀グループはまた、世界の最貧国78カ国(うち39カ国はアフリカ)に対する贈与と長期的な無利子融資の迅速化を図っている。世銀グループで最貧国への支援を手がける国際開発協会(IDA)に対するドナーの拠出額は3年間で約420億ドルに上る。 開発の機動力としての貿易世界貿易はまさに世界経済の機動力となってきた。2007年、途上国は8%近い成長率を記録し、民間の入超資本額は過去最高の1兆ドルとなった。世界貿易は、財やサービスの単なる交換以上の意味合いを超え、知識、ノウハウ、アイデアのより広範なやり取りも含まれるとライプツィガーは言う。 ただし2009年に世界貿易は1982年以降初めて下落に転じる可能性がある。世界経済は辛うじて1%のみ成長すると見られる一方、途上世界の成長率はこれまでの予想値6.5%から4.5%へと低下が予想される。世界銀行は、成長率が1%下がると新たに2000万人が貧困状態に陥りかねないと試算している。 世界的な景気後退が近いと予想される中、11月29日から12月2日の日程でカタールのドーハに各国首脳が集まりドーハ開発金融国際会議が開かれる。同会議は、国際社会による開発協力の転換点となったとみなされることの多い2002年のモントレー会議およびメキシコ会議のフォローアップとして開かれる。 ロバート・B・ゼーリック世界銀行総裁は、途上国の声を反映させるため中国出身の林毅夫・世界銀行チーフエコノミストを世銀総裁および世界銀行の代理とし、ヨルダン出身のマルワン・ムアシャー上級副総裁を含むハイレベルの代表団を派遣する。 ドーハ会議に先立ち、11月28日にはカタールでG20やG20以外の国々の首脳が参加する国連金融危機特別サミットが予定されている。 貿易金融の不足「現時点で世界貿易にとって世界的な需要の低下だけでなく、貿易金融の不足も足かせとなっている」とライプツィガーは言う。「商品を出荷するための資金を調達できないのだ。この問題は解決しなければならず、それも早ければ早いほど望ましい」 「重要なのは今回の景気後退をできるだけ短期に終わらせるよう努力することだ」と彼は言う。
先進国の大半が景気後退に陥ると見られる中、貿易障壁を引き上げる動きに出る国があるだろうとの不安がぬぐえない。 「国際貿易システムが試されているのは間違いない」とライプツィガーは言う。例として、補助金などの形で先進国が検討している様々な産業への国内支援を挙げることができる。 市場の開放性を保つことが鍵だとライプツィガーは言う。各国政府は今回の危機を、貿易関連のインフラへの投資の機会として活用し、貿易促進措置を講じ、特に輸出信用機関を通じるなどして貿易金融の信用枠や保証を維持するため努力すべきだと彼は付け加えた。 世銀は、11月15日のワシントン・サミットでG20各国が行った貿易に関するコミットメントを歓迎している。コミュニケには次のように記されている。「我々は投資あるいは物品及びサービスの貿易に対する新たな障壁を設けず、新たな輸出制限を課さず、世界貿易機関(WTO)と整合的でない輸出刺激策をとらない」 各国の貿易見通し好転を支援ライプツィガーは、世銀の貿易プログラムにより貿易見通しの改善を支援することも可能だとしている。 世銀の 貿易促進・ロジスティクスの拡大を目指すあるプログラムでは、輸出品を目的地までより効率的に運ぶこと、ならびに途上国が国際貿易を行う際のコストを削減し、OECDの輸入基準を満たすなど、世界貿易の機会をもっと活用できるよう支援することを目指している。 別のプログラムは、貿易と競争力、貿易関連インフラなど貿易関連の問題に関する国別プログラムを支援することにより、新たな貿易機会を創出し、「貿易のための援助」イニシアティブ拡大を支援するものである。 「途上国が融資を受け国際市場にアクセスできるようにしなければならない。オープンな貿易システムを維持するためにはその点が極めて重要だと考える」とライプツィガーは言う。「OECD諸国は景気後退に陥るかもしれないが、だからといって保護主義に頼るべきだということにはならない。そんなことをすれば、途上国における何年分もの歩みが台無しになるだろう」 「国際貿易と金融の流れを滞らせないようにするため、すべての国々が大きな責任を担っている。そうすることで世界的な景気後退の打撃を抑えることができる。すべての国々、特に途上国は、そのことで大きな恩恵を得る立場にある」
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