東北復興を考える~スリランカ津波復興支援の経験から~

世界銀行情報センター(PIC東京)コーヒーアワー

2012年3月17日、東京 - PIC東京は、本日、世界銀行シニア都市環境スペシャリストの慶長寿彰さんを迎え、2004年のスリランカ大津波の復興経験と教訓から、東北の復興を考えるコーヒーアワーを開催しました。慶長さんは、今年一月中旬より約2ヶ月間、世銀から休暇を取得し、福島大学災害復興研究所にて福島復興に向けた支援活動に従事しました。

慶長さんはまず、2004年12月に発生したスマトラ沖大地震及びインド洋津波が近隣諸国にもたらした被害を説明しました。災害の被害を語る際には、被害の定義づけが重要です。この津波での人的被害は、インドネシアが死者10万人、スリランカが3.5万人でした。一方、経済的な被害が最も深刻だったのは観光業と漁業が主要産業のモルディブで、両産業が壊滅的打撃を受けたためにGDPの約50%が失われました。日本人は被災者を気遣って訪問を自粛する傾向が顕著ですが、モルディブでは、観光業で成り立つ被災地を訪れ、現地にお金を落とすのは良い復興支援と受け止められたなどのエピソードをまじえ、被害状況を概説しました。

次に、世界銀行によるスリランカ復興支援の紹介がありました。当初、大災害をスリランカ紛争解決の機会とすべく、紛争当事者が復興のため協力できるように、スリランカ政府と反政府勢力タミル・イーラム解放の虎(LTTE)が共同運用する復興ファンドの設立を働きかけましたが、これは実現しませんでした。その後の世銀による津波復興支援では、生活再建、インフラ再建、住宅再建の3本柱の支援を行いました。具体的には、生活面で被災した約20万世帯に4か月間、被災当初の生活必要経費を支給し、インフラ面で道路と医療施設の再建を実施しました。加えて、世界銀行が最も注力したのが住宅再建支援です。被災地は漁業によって生計を立てる漁民が多く、被災者の多くが被災した元の場所での自宅再建を希望したため、世銀は被災者に住宅再建資金を直接提供するプログラムを行いました。民間銀行2行を活用し、速やかに被災者に資金が渡るよう、申請した被災者の個人口座に資金を振り込み、被災者自らが住宅を再建するシステムを構築し、就業支援として大工と左官の職業訓練も併せて実施しました。

プログラムは治安の安定した南部では順調に進み、数年後には98%の再建率に至りましたが、紛争継続中であった北東部ではプログラム実施期間を延長し、状況が安定してから地域に帰還する被災住民を支援できる体制をとりました。しかし、LTTEの本拠地があり、紛争の激しい北部の一部地域では支援を断念せざるを得ない状況でした。全国的には、津波から約5年後の世銀の支援終了時の住宅再建率は94%でした。また、今後の復興支援への教訓として、最後まで再建できなかった6%の多くが母子家庭だったことが事後調査で判明し、脆弱な立場の人々への配慮が課題となったことを指摘しました。

最後に、スリランカの復興支援と自身の東北復興支援の経験から、東日本大震災復興に生かすことのできる教訓を共有しました。特に、被災者主体の復興と、被災地に速やかに資金を流す仕組み、雇用の創出と地域経済の多様化などの対応を同時に進めることの重要性を強調しました。また、福島県には、地震や津波からの復興だけでなく、原発事故および放射能汚染の難しさがあり、特に若い世代、子どもがいる家庭が抱える強いストレスへの対策の必要性を指摘しました。紛争でも放射能でも、脅威に対する反応には個人差があります。スリランカで世銀が地域の紛争の度合いに合わせて対応したように、汚染の度合いによって対応を変えることは考えられるでしょう。その上で、除染の結果に関わらず故郷に戻りたくない人々の移住に向け、自治体がイニシアチブを取って被災者との対話を早急に始めるべきだと、慶長さんは述べました。

この後、2004年当時スリランカ復興支援に参加した方々から、より詳しい支援内容の質問が出るなど、活発な質疑応答となりました。

慶長寿彰・世界銀行シニア都市環境スペシャリスト

会場の様子

当日プログラム: 「東北復興を考える~スリランカ津波復興支援の経験から」スピーチおよび質疑応答

<スピーカー>
慶長 寿彰 さん  世界銀行 シニア都市環境スペシャリスト

<プロフィール> 
現在、ヨーロッパ・中央アジア地域サステイナブル・ディベロップメント環境セクター所属。青森県八戸市生まれ。1986年東京大学工学部都市工学科卒。東京大学工学部修士課程を経て1988年八戸市庁入庁。1992年八戸市庁を辞職し、オクラホマ大学大学院に就学(公共政策・行政経営学修士を取得)。1994年、ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)により世界銀行入行。バングラデシュとパキスタンの都市開発、地方自治体の強化・育成、水道インフラ整備などに従事。2001年6月から1年間豪州ブリスベン市庁都市経営局に出向し、市の持続可能な都市経営戦略を担当。2002年6月に世銀に復帰後は、ブータンの都市開発と地方自治改革、スリランカのコミュニティ主導型インフラ開発、津波復興、紛争地復興、モルディブとインド側カシミールの災害被害算定、アフガニスタンの農村部水道整備、南アフリカ・バッファロー市の都市インフラ投資計画などに従事。2007年5月より2年間のスリランカ駐在。2011年4月より現職で、ロシアとカザフスタンの環境改善を担当。現在ワシントン本部に勤務。

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