コンタクト:Christopher Neal (202) 473-7229 Cneal1@worldbank.org Nazanine Atabaki (202) 458-1450 Natabaki@worldbank.org TV/Radio: Cynthia Case (202) 473-2243 Ccase@worldbank.org 平井 智子(東京) 03-3597-6650 thirai@worldbank.org 2005年9月20日、ワシントンDC―途上国における貧困削減戦略を成功させるためには、主に機会均等という意味での公正を確保することが不可欠である-世界銀行の年刊刊行物「世界開発報告2006」はこう指摘している。 「公正は長期的繁栄の追及には欠かせない」と、同報告書の執筆チーム総責任者で世界銀行チーフ・エコノミスト兼上級副総裁フランソワ・ブルギニヨンは言う。「公正の促進は二重の意味で貧困削減に貢献する。開発全体の持続にプラスになると共に、社会の貧困層にとっての機会拡大につながるからだ」 「世界開発報告2006:公正と開発(仮題)」は、エコノミストのフランシスコ・フェレイラとマイケル・ウォルトンをはじめとする8人が執筆した。公正の促進に着目したものだが、単にその達成自体を目的としているわけではない。より生産的な投資の拡大が見込まれ、更なる経済成長につながるという意味から、その重要性を指摘しているのだ。国内や国際間において富や機会に大きな格差があると極度の貧困が発生し、しかも膨大な数の人々にその影響が及ぶと指摘している。そのため、人々が潜在能力を発揮させることができないばかりか、持続的な経済成長のペースを抑えてしまうこともあるという。 こうした格差の解消には公正を促進する政策が有効となり得ると同報告書は結論づけている。ただし、その目的は所得の平等化を図ることではなく、貧困層が保健・教育サービスや、雇用機会、資本、確かな土地所有権などへのアクセスを改善することにある。さらに、忘れてはならないのは、政治的自由や政治権力へのアクセスを改善しなければ、公正は実現できないという点だ。そのためには、固定観念や差別をなくし、司法制度やインフラももっと利用しやすくしなければならない。 「公共政策は、発言権や資源、能力の一番乏しい層のための機会を拡大するものであるべきだ」とポール・ウォルフォウィッツ世界銀行総裁は同報告書の序文で述べている。「それらの政策は、資源配分において市場が果たす役割及び個人の自由を尊重、拡大する形で進められるべきだ」 途上国において公正を促進するためには、経済・政治面での公正性を確保することによって長く続く機会格差を是正するような政策が特に必要になると同報告書は指摘している。そうした政策の多くはまた、経済効率を高め、市場の失敗を是正するものとなる。具体的には: · 人々への投資:質の高い保健・教育サービスへのアクセスを拡大し、社会的弱者にセーフティネットを提供する。 · 司法、土地、経済インフラ(道路、電力、上下水道、通信など)へのアクセスを拡大する。 · 金融、労働、生産の各市場における公正性を推進し、貧困層にとって融資や雇用に対するアクセスが改善され、どの市場においても差別を受けないようにする 公正を促進するような政策への変更例としては土地改革を挙げることができる。たとえば、インドの西ベンガル州では、小作人のための借地に関する改革が行われ、雇用の安定が進むと共に、生産高の最低75%が小作人の取り分として保証された。その結果、土地生産性が62%改善した。貧困層が融資や保証を利用しやすいようにするのも、機会格差を解消して社会の反映を実現するための有効な方法であることがわかっている。インド、ケニア、ジンバブエといった途上国での調査の結果、貧困層には富裕層と比べてはるかに高い利率が課せられていることが明らかになった。「そのため貧困層は、富裕層と比べた場合はもちろんのこと、市場が適正に機能している場合と比べても、過少投資しか行えていないはずだ」と同報告書は結論づけている。
同報告書は、国内の改革だけでなくグローバルな意味でも、特に労働、物品、情報、資本の各国際市場において公正性を促進する必要性を指摘している。そのために同報告書は、富裕国が途上国からの単純労働者の移住受け入れを拡大すること、WTOのドーハ・ラウンドにおいて貿易自由化を推進すること、貧困国での商標未登録の薬の使用を認めること、そして途上国にふさわしい金融基準を策定するよう、強く求めている。また、開発援助の増額及びより高い効果の重要性についてもあらためて強調している。 それぞれの国の独自の状況に注意を払いながら、こうした政策を組み合わせて実行すれば、貧困層にとって機会格差の解消につながり、たちまちのうちに社会に対する貧困層の経済的貢献度を高めると共に貧困を削減できるだろう。 同報告書は、極端な格差がもたらす負の影響を指摘する一方で、平等と公正性をはっきりと区別している。公正性とは、所得や健康状態など具体的な結果が平等であることとは違う。公正性の追求とは、機会が平等である状況、つまり家庭環境や社会的地位、人種、性別によってではなく、個人の努力や嗜好、さらには自らの責任においての決断によって経済的達成度が異なってくるような状況を作り出すことだとしている。 エリート層による社会基盤の占領は公正性を損なう 同報告書では、公正と社会の繁栄は互いに保管しあうものだとして、政治・経済面の公正性が著しく欠如している場合、経済体制や社会のあり方が影響力の大きい層の利害を優先するようになると指摘している。そうした制度ではその国の経済成長や貧困削減の可能性が損なわれてしまうと同報告書は主張する。
公正性を欠く制度は経済コストが高くつく」と同報告書の共同執筆責任者であるフランシスコ・フェレイラは言う。「政治的影響力の強い人や富裕層の利害を守ろうとするため、大多数の利益を犠牲にする傾向があるからだ。そうなると社会全体の効率性が損なわれる。中間層や貧困層が才能を発揮できない社会では、革新や投資の機会が失われてしまう」 公正を欠く制度のひとつの例として、ガーナでの女性農業従事者を対象とした調査がある。確かな土地所有権を持っていない彼女たちは、毎年土地を確実に利用できるという保証がなく、本来土地を休ませるべき時期や年においても、毎年種まきの季節になると耕作を行う。その結果、土地が肥沃さを保てなくなってしまう。こんなやり方をするのも、土地を休ませておくと、もっと身分の高い人(多くの場合、男性)にその土地を取り上げられてしまうのではないかとの不安があるからだ。その結果、土地の生産性は低下して、さらに不平等が拡大するという悪循環に陥るというわけだ。
不平等の落とし穴から脱け出す 不平等の落とし穴は、個人や団体の間での不平等が、同じ世代や世代を超えて長く続いた場合に起こる。こうした落とし穴の特徴は、子供の死亡率の高さや学校教育修了率の低さ、何世代にもわたる失業や低所得に見られる。機会というものは、大小を問わず、父から息子、母から娘へと継承されていく。そのため、長く機会を剥奪された状態が続くと、投資や革新のためのインセンティブが失われ、開発のプロセスを弱体化させてしまう。そしてその状態は、連動する経済、政治、社会習慣のメカニズムによって固定化されていく。これは、人種や民族、性別、社会階級などによる差別的な姿勢や習慣に見られるとおりだ。
社会がこうした不平等の落とし穴から抜け出せるようにするには貧困層や社会から排除された集団の力を強化することが重要だと同報告書は指摘している。つまり、自らの発言力や政治的説明責任のメカニズム強化を進める能力を高めることだ。エリート層による経済的・政治的権限の乱用に対するチェック機能を強め、貧困層や社会的に排除された団体(女性も団体として含まれることが多い)が、中所得者層と連携して社会の公正性の改革をする戦略を立てることができるようになる。そうした戦略は寡頭政治をはばむのに役立ち、過去に失敗したような大衆迎合的な持続不可能な政策に訴えることなく、政治の場での公正性を保つことができるはずだ。
同報告書の指摘は、それぞれ貧困層のサービスへのアクセス拡大と投資環境改善に焦点を当てた「世界開発報告2004」と「同2005」の結論を補完するものとなっている。
「公正に深く根ざした開発アプローチは過去2年の世界開発報告で示した枠組みと合致するものだ」と、共同執筆責任者のマイケル・ウォルトンは言う。「実際、社会的平等はエンパワメントを達成し投資環境を改善するのに必要な一連の要件の中でも土台となるものだし、ミレニアム開発目標の達成にも欠かすことができない。」
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