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安全な21世紀をめざして

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ジェームズ・D・ウォルフェンソン世界銀行グループ総裁

 

世界銀行グループは以下の姉妹機関で構成されています。

国際復興開発銀行

国際開発協会

国際金融公社

多数国間投資保証機関

投資紛争解決国際センター

 

議長、総務の皆様、そしてご来賓の方々

           

国際通貨基金(IMF)と世界銀行グループの年次総会にご出席いただき心から歓迎いたします。今年は、国際復興開発銀行(IBRD)とIMF がブレトン・ウッズで設立されてから60年目を迎えます。

 

また、IMF専務理事として新たに就任された同胞、ロドリゴ・デ・ラトに対し敬意を表したいと思います。同氏とはすでに緊密に協力を始めておりますが、その豊かな経験と優れた判断力にはただ感服するばかりです。さらに、朋友であるホルスト・ケーラー前専務理事に対しては、在任中の多大な功績にひとえに感謝するとともに、この度ドイツ大統領に就任されたことに、我々一同、心からお祝いを申し上げたいと思います。

 

            世界銀行グループの歴史は長く、それを誠に誇らしく思っています。我々は、第二次大戦後の世界の復興に貢献した後、世界中の貧困を緩和するという新たな役割に挑戦してまいりました。

 

            IBRDへの出資国からの拠出額はわずか110億ドルであるにもかかわらず、IBRDの貸付総額はほぼ4,000億ドルに達しています。1956年に設立された国際金融公社(IFC)は新興市場に670億ドルの資金をもたらしました。多国間投資保証機関(MIGA)は総額135億ドルに上る保証を行ったほか、投資紛争解決国際センター(ICSID)では、合計159件の訴訟を扱い、紛争の調停と仲裁に携わってきました。 

                       

            資金供与国からの拠出金と貸付国からの返済金を財源とする国際開発協会(IDA)はこれまでに総額1,510億ドルの融資を承諾しました。IDA適格国には、11ドル以下で生活する世界で最も貧しい人々の8割が住んでいます。IDAは、効率と説明責任を兼ね備えた誠に優れた融資手段を提供しています。出資国の皆様におかれましては、次回の増資で拠出額の増額を行うようお願いする次第です。

 

我々はIDAを強固な組織として維持する必要があります。

 

            私はこの10年間に成し遂げた数々の業績を誇らしく感じています。我々は60周年を迎えたと言えども、若々しく、しかも「情熱をもって貧困と闘う」という目的のもとで強い決断力と団結力を携えた組織です。

 

我々は、借入国の文化と大望を尊重しながらこれらの国を支援しようと努力していますが、我々の組織自体、多様性に富み、スタッフも世界140ヵ国以上から集まっています。

 

今や国別担当局長の3分の2以上が現地で勤務しているうえ、各事務所は衛星でリンクされ、テレビ会議や遠隔学習が日常茶飯事に行われるようになりました。我々は、世界有数の最先端技術を駆使したグローバル・ビジネスを展開しているのです。

 

            この間、借入国をしっかりと「操縦席」に据える努力も行ってきました。借入国の言うことにもっと耳を傾け、説教するような姿勢は控えてきました。さらに我々は、自己批判することを恐れていません。

 

世界銀行グループは、プロジェクト資金だけでなく、世界各地で得た経験などの知識も借入国に提供しています。最近大いに拡充された世界銀行研究所(WBI)はこの面で重要な役割を果たしています。関連機関であるディベロップメント・ゲートウェイもその一端を担っています。この組織は、開発プロジェクトに関する情報や様々な体験をインターネットを通じて関係者に開放しています。

 

            さらに、開発業務を包括的なものとするために、アプローチの幅も広げました。重債務貧困国(HIPC)イニシアチブを設立して債務問題に真っ向から取り組み、100ヵ国以上の政府と協力して汚職一掃に臨んだのもその一環です。 

 

          世銀の戦略は2つの柱を基軸としています。その一つは人材に投資すること、もう一つは、安定した事業環境を整備して、投資を誘致し、雇用を創出することです。

 

            民間セクターとの協力は世銀グループの活動の中枢を成しています。我々は、全世界を通じて精力的に活動を展開する市民社会の支援と批判から恩恵を受け続けています。

 

            開発の中心は人々です。女性や若者が開発作業で果たす重要な役割に焦点を合わせているのも、またロマ族や他の疎外された少数民族の先住民コミュニティの特別なニーズに的を絞っているのも、まさにそのためです。さらに、障害をもつ人々の特殊なニーズにも支援を送っています。 

 

環境保護も世銀の業務の主軸となっています。地球の保全を無視した真の意味での長期開発など全くありえないことを我々はよく承知しているからです。 

 

            さらに、他の組織や人々とパートナーシップを結ばない限り効果は上がらないという事実もよく認識しています。世銀は、国連をはじめとする多国間機関や二国間機関に働きかけただけでなく、開発効果をいちだんと向上させるために、他の組織や機関との調和と協調を強めようとしています。

 

            しなければならないことは山のようにあります。障害や問題は滞ることなく起きるようです。しかし大きな進歩を遂げつつあるのも確かです。私は、同僚一人ひとりの、献身的でたぐいまれな仕事ぶりに感謝の意を表します。世界銀行グループのチームほど、よりよい世界の構築に向けてたゆみない努力を重ねる有能な職員は他におりません。

 

            さらにまた、理事の皆様とその前任者の方々に対しても、数々の建設的な貢献に深く感謝しています。組織の役員として、そして自国の代表者として、困難でありながらも極めて重要な役割を果たしていただいております。

 

不安定な世界

 

私はこれまでの総会において、あらゆる人々を包含する努力、汚職というガンの一掃、包括的な開発の重要性、さらに富裕国と貧困国の間で新たな世界的均衡を築く必要性といった数々の課題について触れてまいりました。

 

本日、私は、これから立ち向かわなければならない恐らく最も難しい課題についてお話ししたいと思います。それは、地球規模の重要課題、例えば、貧困、不平等、環境、貿易、麻薬、移住、疾病、そしてテロリズムといった問題に、どう対応したらよいかということです。

 

今年はかつてない経済成長を遂げた年でした。にもかかわらず、なぜか将来に不安を感じます。それは、我々の心の奥底に、今後の世界情勢への行方に不安がつきまとっているからです。

 

本部建物の周囲に巡らされたコンクリートのバリアを見ただけで、これまでの総会と大きく異なることが分かります。これらは抗議デモのためではなく、テロを防ぐためのものです。世界銀行とIMFがアルカイダの標的となっていることがパキスタンで押収されたパソコンで判明しました。テロの脅威は、我々の玄関先まで迫ってきているのです。

 

最近、基本的な人道を疑うような出来事が頻発しています。アフガニスタン、イラク、アフリカ各地で続いている血なまぐさい戦争や紛争。スーダンのダルフールでの言葉に絶する大虐殺。バリ島とマドリッドで起きた卑劣なテロ行為。ヨルダン川西岸・ガザ地区のパレスチナ人とイスラエルの間の過熱する闘争。また、ロシアのベスランでは、人質となった子供たちが背中から撃たれて殺されるという惨事が起き、さらにバクダッドでは、罪のない人質を虐殺する映像がテレビに映し出されました。  

 

その反応として、我々は身の安全に気を取られるようになりました。テロとの闘いはまさに正当な行動であり、力を合わせて戦わなければなりません。しかし、こうした目前の脅威に気を取られて、不安定な世界の元凶である貧困、不満、絶望感といった同様に緊急を要する長期的な問題を見失ってしまう危険性をはらんでいます。

 

過去10年間、私は妻のエレーンとともに100ヵ国以上を歴訪し、そこの村落、粗末な家の並ぶ町、遠く離れた農村、スラム街に住む貧しい住民と必ず会ってきました。

 

彼らは、ここにいる私ども同様、安全で平和に暮らすことを望んでいます。女性は、家庭の内外で暴力をふるわれることなく生活を築きたいと願っています。子供たちに教育を受けさせたいと望み、自分たちの声を聞いてもらい、敬意ある扱いを受けたいと願っています。そしてまた、自国の文化を健全に保ち、希望を欲しています。

 

彼らは安全な生活を望んでいます。ただし、彼らの望む「安全な生活」とは、我々の定義するものと少々異なります。 彼らにとって重要なのは、コンクリートのバリアや軍事力ではなく、貧困から脱するチャンスを得ることなのです。

 

世界に安定をもたらしたいのであれば、貧困に終止符を打つ必要があります。ブレトン・ウッズ会議が開かれて以来、ピアソン委員会、ブラント委員会、ブラントランド委員会、そして2000年の国連ミレニアム総会で採択された首脳表明のどれをとっても、今日にいたるまで、貧困撲滅が世界の安定と平和の主軸であることが確認されています。

 

そしてそれは依然として我々の時代の難しい問題となっています。

           

達成は可能

 

開発が効果をもたらすことは、我々もよく分かっています。過去20年間だけを見ても、世界の貧困率は40%から21%へと半減しました。過去40年間に途上国の寿命は20年延びたうえ、成人の非識字率も22%へと半減しました。

 

私は、この総会のために、世銀のチーフ・エコノミストであるフランソワ・ブルギニオンとともに論文を出版し、その中で、過去10年間に学んだ開発の教訓を振り返り、今後直面する問題について検討しました(これに関する詳細はウエブサイト http://www.worldbank.org/ambc/lookingbacklookingahead.pdfをご覧ください

 

これらの教訓は今後の活動の礎となりえます。今年の初めに中国政府と合同で開催した上海会議では、途上国同士が、成果を上げた経験とそうでなかった経験を共有し合いました。貧しい人々を慈善の対象としてではなく変革をもたらす媒体として取り扱ったならば、開発作業を急速に加速できることが、100件以上のケース・スタディで明らかとなっています。

 

ご来席の皆様の中には、ドーハ、モンテレー、ヨハネスブルグの会議に出席された方も多いことと思います。 先進国はこれらの会議で援助、貿易、債務救済についての約束を行いました。ここで少々付け加えると、米国、イギリス、フランス、ブラジルなどの諸国がまとめた援助と債務緩和案を、我々は大いに支持しています。一方、途上国の方も、能力と機構の構築、司法の枠組強化、金融制度の改善、透明化、汚職一掃といった点でもっと努力を重ねると約束したのです。

 

来年は、ミレニアム開発目標(MDG)の達成状況を審査するために国連に集まります。2015年までにもうあと10年しか残されておりません。中国とインドのおかげで、貧困半減という全体的な目標を達成できそうなことは分かっております。しかし、大半の諸国がその他の目標を達成できないのもすでに明らかとなっています。特にアフリカは大きく立ち遅れています。

 

それでは、どうすればよいのでしょうか。2015年になって、富裕国と貧困国の間の均衡が今よりさらに崩れ、治安と安全が悪化していたならば、我々の子供たちはどうすればよいのでしょうか。 

 

議長、私は、国際コミュニティが一弾となって活動の質を引き上げる必要があると確信します。我々の将来を左右する重要なグローバル問題にもっと手綱を締めて対応する必要があるのです。私の見解では、取り組むべき急務が3つあると考えます。

 

·         環境に対する責務を通じた地球の保護

·         貧困緩和の効果の拡充

·         21世紀に向け若者をこれまでとは異なった方法で教育すること、彼らに希望をあたえること

 

これらについて少々触れてみたいと思います。

 

地球の保護:環境の持続性

 

まず第一に地球を保護することです。

 

成長の促進は、あらゆる生物が依存している生態系をしっかり認識したうえで行わなければなりません。経済成長は自然環境を犠牲にしなくても達成できるはずであって、両者を両立させなければなりません。

           

            地球の壊れやすい環境を保護するには、我々全員がもっと効果的に作業し、地球温暖化に対応しなければなりません。ストックホルムで環境会議が開かれてから30年が経ちました。いくつかの分野では前進を見たものの、その間に進んだ地球環境の乱用ぶりには警戒心を掻き立てられます。

 

富裕国の国民は大量のエネルギーを過剰使用し、無駄にしています。平均的なアメリカ市民もしくはカナダ人は、平均的な中国人に比べ、1人当りほぼ9倍、アフリカの平均的市民に比べ、実に12倍ものエネルギーを消費しています。さらに気候の変動が進むと、小さな島国やラテンアメリカ諸国、南アジア諸国、サハラ以南のアフリカ諸国の貧しい住民が、干ばつや洪水の猛威にさらされる脆弱な存在となるのです。

 

            森林は容赦なく伐採され、世界の生物種のうち、哺乳類のおよそ4分の1、魚類のおよそ3分の1が絶滅の危機にさらされた種、あるいはその瀬戸際に瀕しています。海洋では大型魚の90%がすでに捕り尽くされています。

 

            議長、これでは我々は、地球の保全より、その破壊の方が得意だと証明しているようなものです。

 

            このことは、2週間前に、ペルー高原のマチュ・ピチュ近辺に住む、貧しくも誇り高い農夫が世界銀行を訪問したときに気づかされました。この農夫は、何千人もの先住民の代表の一人として、国立アメリカ・インディアン博物館の開館式に出席するためにワシントンを訪問していたのです。この開館式の式典の一環として世銀が文化と開発についてのフォーラムを開催したときのことです。

 

            伝統的なウールのニットでできた帽子と装束を身にまとい、高地の強風に長年さらされた顔の彼は、先住民の言葉であるケチュア語で自分たちの山々は「悲しんでいる」と話してくれました。何千年もかかって形成された氷河も“笑った顔”のように山の表面のあちこちに残されただけで、それも年々解けて小さくなっていると言うのです。こうして氷河が後退するにつれ、湖や川に流れ込む水もなくなり、動物がその犠牲となっています。アルパカの毛は例年の半分しか収穫できず、渓谷一帯の所得は半減し、農夫たちは故郷を捨てようとしています。

 

            そこで、このマチュ・ピチュ出身の農夫はいとも単純な質問したのです。「氷河を取り戻すために手伝ってくれませんか」。

 

地球温暖化の影響を理解していない者にとって、これは、今すぐに助けを求めている切実な叫び声なのです。この農夫にとって、これは具体性のない長期的な問題などではなく、今悩んでいる目前の問題なのです。彼にとって、これは生活を脅かす安全問題なのです。

 

助けを求める彼の叫び声が恐らく聞こえたのでしょう。ロシア政府は最近、京都議定書に批准する決定を下しました。私はこれを大いに歓迎いたします。こうした努力や他の支援の兆候を育んで、ヨハネスブルグ・サミットで合意した共通の責任を果たすよう各国リーダーの政治的承諾を取り付けようではありませんか。

 

環境問題は我々全員に影響を与えます。しかし貧しい人々は特にその影響を受けやすい脆弱な存在です。我々は、再生エネルギーをもっと優先させる必要があります。環境を汚染しない新しい技術が開発されれば、先進国が支払った環境上の犠牲を繰り返すことなく、途上国は開発の恩恵を受けることができるのです。 

 

地球の保全という約束は何としてでも果たす必要があるのです。

 

 

貧困との闘いの拡充

 

公約を守るべき第二の急務は、貧困緩和の作業を拡充することです。

 

基本的な事実は誰もが知っています。12米ドル未満の生活を余儀なくされている人々は、世界人口の半数にも上り、さらに11米ドル未満で暮らす人々は5分の1に達しています。世界人口は今後25年間で20億人増加すると予想されていますが、その97%は途上国の国民で占められ、その大半が貧困家庭で生まれるとみられています。

 

この10年ほど、開発援助の効果を上げるための静かな「革命」が進行しています。例えば、各国が自分たちのプログラムに対するオーナーシップ(自己責任意識)をもつようになったこと、良い政策に的を絞って援助が行われるようになったこと、ドナー国/機関の間での協調作業が増したことなどが挙げられます。こうした変化をまとめると、今後10年間に援助の効果を2倍、3倍に拡大することが可能となります。

 

さらに、プロジェクトの成果をもっと多くの人々に広げることも可能となります。皆様もご存知のように、これは、世界銀行とそのパートナーにとって、まさに深刻な課題となってきました。5件の学校建設プロジェクト、100マイルの道路建設、10件のコミュニティ・プログラムを終了しても気休めにしかなりません。実際に必要なのは、学校を5,000ヵ所に開設し、道路を1万マイル建設し、コミュニティ・プログラムを5,000 件実施することなのです。

 

上海会議では、成功を収めた小規模のプロジェクトを基にして、それを拡充する方法を学びました。そのどれにも共通する点は、何年にもわたって一貫した管理を行うこと、反復可能な単純なモデルを使用すること、そして貧しい人々が全面的に参加することです。

 

私はそれを自分の目で確かめました。

 

1996年に中国を訪問中、黄土高原に住む一人の女性に出会ったときのことです。世銀はこの乾燥した山岳地帯で農業プロジェクトを支援していたのですが、当時、彼女は電気も水も引かれていない洞窟に住み、生活の向上などほど遠い存在でした。

 

            今年の春、私はこの女性と感激の再会を果たしました。彼女はどのように生活が向上したか話してくれました。今では、洞窟を2つもち、ドアと窓があり、電気と水が引かれていると言い、息子にオートバイを買ったと話してくれました。さらに、息子が結婚し、今では娘の教育を楽しみにしていると言ったのです。

 

彼女は、この高原で10年以上かけて実施された、32件に上る一連の同じようなプロジェクトを通じて希望を見出した300万人の人々の中の一人です。これらのプロジェクトは、何千人もの人々が、文字通り鋤や鍬を手に、岩だらけの土地を耕地へと切り開いたもので、この地域はもはや乾燥した荒地ではなく、緑豊かで、作物と家畜で溢れています。

 

世銀と中国のパートナー機関が、10年にわたってプロジェクト管理に携わり、学んだ教訓を活かしながら同じプロセスを何度も繰り返したのです。これらの教訓は今や中国の他の地域でも活かされており、やせた土地に住む何百万人という人々がその恩恵を受けています。

 

            この例は明確なメッセージを伝えています。貧困緩和を拡充することは可能であり、従ってもっと安全な世界を築くことも可能なのです。

 

若者と教育

 

            もちろん、貧困は若者にとっても大きな関心事です。また、この若者こそが、私が早急に取り組むべきだと考える第三のグローバルな要素です。   

 

世界人口のおよそ半数は24才未満の若者で構成されています。新たにHIVに感染する患者は毎日14,000人に上りますが、そのうち半数は15才から24才の若者たちです。また、就労年齢に達した若者の50%以上は就職口すらありません。こうした若者が、闘争や紛争の犠牲者として巻き込まれたり、兵士として加わるケースが驚くほど頻繁に起きています。そのいずれの場合も悲惨な結末は否定できません。

 

若者と我々自身のために平和をもたらすには何をすべきなのでしょうか。 

 

私が学んだことの一つは、解決策を見出す際に若者を交える必要があることです。先月、私は、 世界83ヵ国から集まった若者のリーダーたちとサラエボで会合を持ったのですが、そのとき、調和と尊敬、平和に育まれた、よりよい未来の構築を若者が切に望んでいることを聞き心を打たれました。私が会ったボスニア人、セルビア人、クロアチア人の若者は、同国の過去を水に流したいと切望しているのですが、自分たちがそうできないのは、大人たちがまだこだわっているからだと感じています。1年前にパリで会った若者同様、自分たちは未来の存在ではなく、現在そのものだと語ったのです。

 

我々は若者を教育して、よりよい世界を築くための支援を送らなければなりません。その手始めとも言うべきものが、子供の幼少時からの育成です。それというのも、子供の将来は6才までに大方決まってしまうからです。 

 

世界銀行がこの分野で主導的な存在であることを、私は誇りに感じています。世銀は幼児教育に10億ドル以上を投じました。世界各地で得た我々の経験は世銀のウェブサイトで一般に公開されています。

 

            我々は、2015年までに全児童に初等教育を受けさせるというミレニアム開発目標の達成にも積極的に活動しています。しかし、教育とは子供を学校に入れさえすればよいわけではありません。教育の内容と質も重要なカギとなるうえ、子供たちを学校に留めておく必要があります。 

 

先進国と途上国の子供たちはお互いをもっとよく知り合う必要があります。私が恐れているのは、憎悪を掻き立てる教育があまりに多いことです。憎しみは後になって消そうとしても消えないものです。 

 

            子供たちに質の高い教育を与えることは、正しい行いであるだけでなく、開発にも多大な影響を与えます。現在、未登校の子供たち11,500万人を学校に通わせたならば、今後10年間におよそ700万人の人々をHIVの新たな感染から防ぐことができるでしょう。2年前に「ファスト・トラック」イニシアチブを開始したのもまさにそのためです。このイニシアチブは、現在通学していない子供たちに初等教育を受けさせるペースを早めようというものですが、その経過はどうでしょうか。

 

            全児童が小学校を卒業できるようにするには、今後78年にわたり毎年36億ドルの追加援助資金が必要になると世銀は推定しています。この援助が可能となれば、生徒数40名のクラスに1,200ドルを供給でき、教師、教科書、教室に必要な費用を支払うことができます。これは、現在未登校の子供1人につき年間わずか30ドルに過ぎません。世界の1人当り軍事防衛費150ドルと比較すると取るに足らない金額です。

 

ところが悲しいことに、国際コミュニティはこの金額をいまだに動員できない状態にあります。1990年にタイのジョムティエンで開かれた会議でも、その後2000年に開かれたダカール会議でも、さらに2002年のモンテレー会議でも、約束をしておきながら子供たちを失望させてきたのです。

 

我々は約束を果たしておりません。

 

21世紀のためのグローバル・リーダーシップ

 

            議長、地球の保護、貧困との闘いの拡充、そして若者への教育という3つの課題は、より安全な世界を築くうえで不可欠なものです。我々は何をすべきなのかよく承知しています。それにもかかわらず、実行されていないのはなぜでしょう。

 

            それは、我々が、国際コミュニティとしてグローバル問題を適切に管理していないからだと私は思います。ところが、現在直面している最も重要な課題は、かつてほど国内問題に集中しているわけではなく、世界規模の問題であり、しかも短期的ではなく長期的なものです。

 

これに対する現在の仕組みは、一連の国際会議を開催して目標を設定するというやり方です。これには、環境上の目標から、男女平等の重要性、教育にいたるあらゆる課題が含まれます。近年、コフィ・アナン国連事務総長の優れたリーダーシップのもとで、国連は数々の国際会議を開催しました。2000年の国連ミレニアム総会で2015年をめどに目標が設定され、全員一致で採択されたのは誰もが知るところです。

 

その後、各国政府は、国際機関と責任下に置かれた組織や機関の支援を受けて、目標の達成に努力します。およそ5年ごとに別の国際会議が開催され、進捗状況が検討されますが、目標達成ならずという結論に至るのが普通です。そこで新たな目標が設定され、非難と賞賛が交わされた後、次の5年がスタートするわけです。 

 

この5年間に、各国の首脳や閣僚は、年に一度、様々な形で別々に集まり、設定した国際目標や公約を12日かけていくつか話し合います。この中で最もよく知られているのは毎年開かれる8ヵ国首脳会議(G8)ですが、これ以外にもG10G20G24G77など多数あります。さらに、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、欧州などの地域会議にも出席します。 

 

  こうした会議が過去数10年にわたって大きく貢献したのは事実ですが、設定した目標が大きな遅れをとっているのも確かです。我々はもっと強力なリーダーシップを必要としており、重要なグローバル問題にもっと継続的に取り組む必要があります。

 

こうした考えは、実に25年前に7ヵ国首脳会議(G7)が初めて開かれたときにすでに浮かんでいたのです。当時の主要国のリーダーたちは、年に2日ほどを長期的なグローバル問題を考慮するのに充てる必要があると認識していました。このような会議は非常に重要であり国際的な脚光を浴びます。そうした場所で現行の重要問題を検討し、国際社会の注目を喚起するのです。

 

ところが、この25年間にグローバル問題は切迫した問題へと発展するばかりです。先進国と途上国の間のバランスにも大きな変化が生じ、さらに変化していくのは明らかです。

 

こうした中で、多大な貢献をしたG8のリーダーが、このような会議をもう少し頻繁に開くよう考慮したらどうでしょう。その際、緊急を要するグローバル問題を新たな視野で取り組むため、世界の他の地域からもリーダーを招き、代表者の幅を広げたらよいのではないでしょうか。こうすることで、世界各地でどの程度の進歩を遂げたかを報告し、各国の達成状況を公開することが可能となり、公約厳守を徹底させるのに役立ちます。   

 

今日の世界では、我々は皆、一国の市民であるだけでなく、グローバル市民でもあるのです。世界規模のリーダーシップのもとで、もっと目に見える具体的な取組みがなされない限り、真の平和と安全をもたらすための打開策を講ずることはできないでしょう。

 

終わりに:約束厳守

           

議長、世界は一つしかありません。一ヵ所で起きた環境破壊は、世界で起きた環境破壊を意味します。一部で起きた貧困は、世界の貧困を意味します。そしてテロ行為でも同じことが言えます。バリ島やマドリッド、モスクワでテロが起きれば、我々全員が恐怖を感じ、世界中が不安を感じるのです。

 

世界を安全で公平なものとすることは、我々全員が協力して取り組まなければならない課題です。それには世界規模のリーダーシップと政治的な意志を必要とします。マチュ・ピチュの農夫や黄土高原の女性、サラエボの若者との約束を果たすには、これ以外の方法はないのです。

 

それは、我々自身と子供たちに対する義務であり、平和と安全のために選択しなければならないことなのです。

 

ご傾聴ありがとうございました。

           

           

 





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